会ったことのない祖父がいます。
正確には、いました、でしょうか?
祖父は四十代の始めに戦死しました。
終戦ぎりぎりに、本来ならば兵役に取られる年齢ではなかったにも関わらず、将校の不足から戦地へ赴くことになったのでした。戦地から家族へ向けて出した最後の手紙が二通、残っています。知り合いの企業経由で届いた手紙でしたので、当時通常では手紙に書けなかったような内容も記されています。以下最後の手紙にあたる文章の全文を引用してみます。
(人名は伏せました。■坊は、末っ子に当たる私の叔父の名前です。)
興味のおありになる方だけ、どうぞお読み下さい。
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基隆から高雄へ来てちょっと一服、二三日中に此所を出て愈々最後のコースたる目的地に向う予定、これまでは危機を切り抜けてきたが、これから先のバッシー海峡(比島基隆間)が想像以上の難関だ。先日は十一隻中十隻がやられたという。愈々文字通り決死の航程だ。この手紙の着く頃にはその運命の鳧が着いている。静かに運を天に任せて南の海を望んでいる。
出発以来基隆までも、実に四十余年間僕の味わった最大の難行苦行だった。暗黒の海、暗黒の船の中に暗黒の前途を考えつつ、敵潜水艦の恐怖に絶えずさらされている。
食事は二度、足を伸ばしても眠られぬ狭さ、便所に行くにも水一杯を得るのにも(?)からぬ苦労だ。これを考えれば内地の日常生活は如何に不自由でも如何に不満足でも実に極楽生活だ。愛する家族の顔をみて、何はなくとも三度の飯を食う。足を伸ばして眠られるという世界は今の生活からみれば本当に極楽浄土の思いがする。
苦しい中にいつもいつも皆んなの事皆んなの顔が次々に思い浮かべられる。数々の過去を反省して、もっと良き夫であり、もっと良き親であり度かった等という感じが泌々と脳裏に浮かんで来る。人の生命、人の運命などは大きな動きから入れば誠に弱く誠に果敢ないものだとつくづく感じられる。然し僕もお前の為、子供達の為、両親の為に強く運命と戦わねばならぬと思っている。
お前も子供等の親として強くあるようにお願いする。
病気も多分順調を辿っている事と思う。子供等も元気な事と思っている。思いがけず表記のお取引先に大変お世話になった。このお宅には今年二つの可愛いお子さんがいる。顔見る度に■坊の姿が思い出されてならぬ。
この次の便り、又この次にそちらから貰える便は相当先の事になるだろうと思う。●●君託送の手紙は嬉しく拝見。肌身放たず大切に持っている。
時間がなくて一々皆様にご挨拶も出来ぬ。面接の折はお前からもくれぐれもよろしく伝えてくれ。
では充分体を大切に摂養して呉れ。
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走り書きで読みにくいところもあり、(?)は解読が出来なかった場所です。
祖父の亡くなった年齢を超えてしまった今となっても、この手紙を書いた祖父の、そしてこの手紙をただ読むことしか出来なかった家族の、祖母、私の母、叔父や叔母の思いは、私の想像に余ります。恐らくどこにも辿り着かない暗黒の船に、おそらくはただ海に沈む、それだけの為だけに乗らねばならなかった祖父。それはあまりに悲しく、そしてその、何の意味も無い死はあまりにも、ただひたすらに虚しい。その悲しさと底知れぬ虚しさが、私の知る唯一の「戦争」です。
私は戦争を知らない子供達の一人です。私の知る戦争は全て本や映像作品や漫画や、人の話、そしてこの祖父の手紙、そんなものからヒントを得た想像力の産物に過ぎない。誰かを、何かを守る為に自分の生命を投げ出さねばならない、そして人を殺さねばならない。そんな過酷な選択を迫られた事もない。そんな場所に追いやられた人、そして誰かをそんな場所に追いやってしまった人の心の内を思ってみようとはしても、想像に余る事ばかりです。ただ悲しい、虚しい、と繰り返すしか出来ない。
実は、上記祖父の話を、少し前に新聞記事にして頂き、
その際に家族と祖父話、戦争の話を少しする機会がありました。
私は「戦争を知らない子供達」ですが、母やその上の世代の人たちは、ギリギリ「戦争を知っている」世代でもあります。戦争に赴いた方、見送った方、または戦争を生き抜いた子供達。
私たちは多分最後の、「戦争を知っている人から直接話を聞ける、戦争を知らない子供達」世代になるんだろうなあ、と。そんな事も思いました。そして、そうあって欲しいなとも。
……といいつつ、この文章もかなり迷いながら書いています。
私が「戦争」という言葉に思いを馳せる事は、普段は殆どありませんから。自分の誕生日が原爆記念日に当たることから、原爆の小説を色々読んでみた事はあります。終戦記念日などには、やはり平和のありがたさや戦争の悲惨さについて思いを馳せる事もあります。でもその程度。所詮「戦争」は私にとって遠い世界の事であり、反戦運動やら、世界平和に何らかの形で貢献した事も無い。そんな平和ボケした人間の一人である私が「戦争」を、つたない知識で語る事に大いなる迷いがあります。そして、戦争において、一方的に犠牲者であった訳ではない、加害者である自国の歴史についても考えざるを得ない。そんな所も迷いの一つになります。
でも、やはり、私は人を傷つけるのが怖い。人を殺すなんて怖くて堪えられない。殺されるのだって嫌です。でももし私の背後に、大切な人がいたら。守るために殺さねばならないと言われたら。怖いなんて言っていられないと思う。そんな、殺されねばならない、殺さねばならない、そんな場所に追いやられたくはない。人を追いやりたくもない。だから、戦争は嫌です。
戦争なんて無ければいいと思う。
世界が平和であればいいと思う。
何も行動していないお前にそんな事を言う資格はないと言われても、ただそう思う。
一人でも多くの人が、「やっぱり戦争なんて、絶対嫌だよね」
と思う事は、決して無駄ではないと思う。無駄ではないと信じたい。
そんな甘いもんじゃないだろう、と言われてもそう信じたい。
そう、私はそんな個人レベルの気持ちでしか「戦争」を語る事が出来ません。
そんな自分に恥じ入りながらも。
何だか中途半端な文章になってしまった気もしています。
まだここに来ても迷いながら。そんな今日のブログです。
それでも、何も書かずに以下の番組を紹介することが、どうしても出来ませんでした。
「15歳の志願兵」というドラマの音楽を担当させて頂きました。
http://www.nhk.or.jp/nagoya/jyugosai/
8/15、終戦記念日夜9時から、NHK総合にて放映になります。
内容については、ご覧になって下さい、と申し上げる事しか出来ませんが、
自分だったらどうしただろう、どう出来たんだろう………。
私はそんな事を考えながら、この作品を見ていました。
ただ言える事は、いつの時代も人は、本当に真摯に生きているなと。
私は「人」が好きです。
真面目に、真摯に生きている「人」達が、
その真摯さ故に悲しい所へ追い遣られるような
そして真摯さ故に、誰かをそんな所へ追い遣ってしまうような、世界になりませんように。
そんな事が、少しでも少ない世界になりますように。
そう祈らざるを得ません。
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初香港でした。超簡単滞在記を。
えっと、今回、「さすがにデジカメくらい買うか……」といきなり成田で思い付き、にゅーデジカメを購入して行ったにも関わらず、私の写真はダメすぎでした(笑)。下手な上に、普段写真撮る習慣があまり無いせいもあってか、数が少ないので使える写真殆ど無かったの。なので香港の素敵風景等は、どこか他の素敵写真サイトなどでご覧下さい(^_^:)。ごめんね、なので写真無しのひどい滞在記です……。
まず飛行機の中から見た香港の第一印象は、「何て綺麗な街なんだ!」でした。
ひたすら広がる緑の丘陵。その中に、いきなり高層ビルの群れがだんだんっと。
それも同じ形のビルが配置も美しく並んでいる場所が多いので、良くできたsim cityとか、ゲームでダンジョン抜けた先にいきなり広がる未来都市とか、そんなイメージの風景でした。高層の建物がデフォなのね。ここで、30F40Fを高層なんて呼んだら笑われちゃう感じ。いいなキレイだなー。
ちょっとした山の上まで登り、香港の風景を見下ろせる観光名所、ビクトリアピークにも行きました。
百万ドルの夜景とやらは、素直に本当にキレイでした。とても混んでいたけれど、あれは何時間見ていても飽きないですね。
しかし何より印象に残ったのは、ここから降りてくるトラム(市電)かもしれない。45度ほどの傾斜になる所もあるようで、でも思ったより「なにこの傾き!」という肉体的な違和感は無い。ただ、「私のまっすぐは、これくらい」と、体の傾きを補正しても、外のビルがまだ30度位傾いてるの。いやいや嘘でしょ、絶対君たち(ビル)傾いて建ってるでしょ! と言い張りたくなる。自分の三半規管がいかに信用ならないものか思い知りました。
その他九龍公園へ朝お散歩に行って、体操している方々をおおーと拝見したり、小鳥市場で綺麗な小鳥を沢山見たり、女人街で可愛い安いグッズを大人買い(大人買いしても大人な値段じゃない所が素敵)したり、中華風お汁粉が無茶苦茶美味しくて、頼むから東京にもこのお汁粉店出店して欲しいと思ったり、トラムにも乗ってみたり、結構盛りだくさんな素敵観光でありました。
そして美術館を二つ見る。
陶器が割と好きなので、それ目当てで行った割に展示品はそんなに数が無かった訳ですがそれより。
美術館ショップで発見した本が嬉しかった。
何の本かと言えば、「鼻煙壺」の本です。
ご存じない方もいらっしゃると思いますが、鼻煙壺というのは携帯用に嗅煙草を入れる容器で、
まあ要は小さな蓋付き壺です。(詳細はぐぐってみてね、ごめんね←ひどい)
梶浦、どうやら手のひらサイズの「容器」に弱いようなのであります。
密かに香合をプチコレクションしていたりします。
(香合というのは茶道具の一種で、お香を入れる小さな蓋付きの容器であります。詳細はぐぐって以下略)
鼻煙壺も、レプリカですが幾つか持っていますが、もうこれ以上モノを増やしたくないのでコレクションには至らず、写真や骨董品屋で素敵やな〜、と見るだけで後は我慢の日々なのですが、この鼻煙壺だけの写真集というのが、あまり日本では手に入らなかったのです。あっても結構高い。
これがね、さすが本場、美術館ショップに沢山あったの。買い切れないほどあったの。それも安い!
ああこれ以上は持てない、と言いつつ五冊買って来ました。
ホテルとか、帰りの飛行機の中でぐふふふ、と喜びつつ見ておりました。
色々案内してくれて、私のどうでもいいような質問にも丁寧に答えてくれたS君。
お陰で本当に楽しい香港滞在でした。ありがとう!
そう。
観光三昧な楽しい香港だったのですが。
本当の目的は観光ではありませんでした。
それは香港で開催された、Kalafinaのライブを見る事だったのでありました。
以前も香港や、他のアジアの地でライブをさせて頂いたKalafina。そこで出会った、ライブに来て下さった皆様が、とても暖かい声援を送って下さった事に、Kalafinaはとても感激し、いつもその話を聞かせて貰っていました。そのライブを、私も見て見たかったの。アジアの、Kalafinaを応援して下さっている皆様と、間接的にお会いしたかったというのもありました。
そんなKalafinaライブ。
一曲ごとに、いえ、Kalafinaの一挙手一投足ごとに、お客様が送って下さる熱い声援に私も大変感動し、
ああ、本当に嬉しいな、とKalafinaを、お客様を、背後から見守っていた訳なんでありますが。
アンコール二曲が終わった後、Kalafinaメンバーが、
「みんな今日は何の日か知ってる〜?」
「実は私たちのプロデューサー、梶浦さんのお誕生日なんですよ〜」
なんていきなり言い出すじゃありませんか。
え。ちょっと待って、何それ、
一応私、今回はこっそりライブ見てる事になってる筈なんですが、あのちょっと……。
とあわあわしている間に、
「じゃあ梶浦さん呼んじゃいましょう〜」
ステージに呼び出されてしまいました。
そして綺麗な花束を貰った上に、Kalafinaと、お客様皆様で、ハッピーバースデーの大合唱。
ええ。
こんなにね、嬉しいこと、多分人生にそう滅多にあるもんじゃありません。
夢を見ているみたいだなあ、と思いました。
私に秘密で、(本当に何も気づいていなかったんですよ……)
こそこそと(笑)、あの企画を着々と、立てていてくれたMさん、スタッフの皆様、
そしてKalafinaメンバー、笑顔で祝福を下さった、あの場にいらして下さった皆様。
本当にありがとうございました!
幸せすぎる夜でございました。
泣くだろ!泣いたよ(笑)。楽屋でこっそり。大人だもん。舞台で泣けないじゃん(笑)。
幾つになってもね、自分が生まれた日を祝って頂けるというのは本当に嬉しいものでありますね。
それも自分の音楽を聴いて下さっている皆様から祝って頂けるなんて、幸福すぎます。
繰り返しになっちゃいますが、香港の皆様。
そして改めて、コメントやメールでお祝いメッセージを下さった皆様。
幸せをありがとうございます。皆様が私に下さった幸せを、何らかの形でお返し出来る日が来ますよう!
それはきっと音楽という形でしか、私には出来ない事だと思いますので、
精進し、頑張ります……。
Thank you so, so much, for the birthday song you sang for me!
What a wonderful surprise it was….I will never forget the night, for the rest of my life.
and thank you, for all your letters, messages, I have read all of them, and keep them as my treasure!
I hope to see you all again, in your beautiful city, Hong Kong!
Comments (19)
さてさて。相変わらず更新が滞っておりましたが!
とにもかくにも。
昨日お誕生日を迎えまして、
コメント、メール、お誕生日メッセージ下さった皆様、
本当にありがとうございました!
幾つになっても、お誕生日を祝って頂けるというのは
ただただ、本当に嬉しい気持ちで一杯であります。
今年も、皆様に色々な音楽をお届けできるよう、頑張ります!
thank you so much! for your birthday messages,
beautiful pictures,music,and your song….
now I’m reading your messages, letters, again and again,
and listening to your song again and again and again and…..
your wonderful, heartfelt song will be surely everlasting, in my mind!
thank again, so much!!
そして梶浦はここ数日香港におりました。
とても素敵な事ばかりがあった香港滞在でした。
数日中に香港滞在記、書きます!
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